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ゴールデンサークル理論とは|マーケティングに活用する方法も解説
2023年04月06日
2010年にTEDでサイモン・シネックが提唱したゴールデンサークル理論は、You Tube上で1,700万回以上再生され、48か国語で字幕がつくほどに人気の理論です。ゴールデンサークル理論は、過去の優れたリーダーのプレゼンテーションから、人の心をつかむ説明の方法を理論化しています。ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用することで、お客さまの感情に訴えかける商品説明が可能になるでしょう。
この記事ではゴールデンサークル理論の内容や、ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用するための方法について解説します。
1. 人の共感を得るためのゴールデンサークル理論とは
ゴールデンサークル理論とは、「WHY(なぜ)→HOW(どうやって)→WHAT(何が)」の順番で伝えることで共感を得られる、という理論です。説明を「WHY(なぜ)」から始めると、他者の感情や信念の部分に触れられるため、行動を促しやすくなります。
ゴールデンサークル理論は、マーケティングコンサルタントのサイモン・シネックが提唱した考え方で、人間の脳の働きに沿っていると言われています。
(出典:TED「Simon Sinek: How great leaders inspire action」/https://www.youtube.com/watch?v=qp0HIF3SfI4)
1-1. 従来の伝え方とゴールデンサークル理論の違い
従来の伝え方では、「WHAT(何が)」「HOW(どうやって)」の部分が重視された結果、「WHY(なぜ)」の部分が省略される場合がありました。「WHAT(何が)」「HOW(どうやって)」、すなわち商品のスペックや魅力を伝えることに力を注ぐと、「なぜ商品を開発したのか」という視点が抜けてしまいやすいです。
ゴールデンサークル理論では、説明を「WHY(なぜ)」から始めます。「WHY(なぜ)」を伝えると、商品やサービスに込めた信念や意義が伝わりやすく、お客さまの感情に直接働きかけられます。
例えば、「WHAT(何を)」の部分から、以下のように製品をおすすめする場合、商品のカタログスペックや利点は分かるものの、感情に訴える力は弱いでしょう。
当社が新開発した高機能のスマートフォンは、高速回線と高発色の大画面、高画素数のカメラを搭載したことで、美しい写真を200%速くシェアできるようになりました。どこでも家族や友達と写真をシェアできます。
同じ製品でも、以下のように「WHY(なぜ)」から切り出す場合、より強く感情に訴えかけられ、企業や商品のブランドを高めやすくなります。
当社の企業理念は、「家族や友達とどこでもつながりあえる」です。この理念をもとに、どこでも家族や友達と写真をシェアできるスマートフォンを開発しました。高速回線と高発色の大画面、高画素数のカメラを搭載したことで、美しい写真を200%速くシェアできるようになりました。
1-2. ゴールデンサークル理論を活用している具体例
サイモン・シネックは、Appleのスティーブ・ジョブズによるプレゼンテーションなどからゴールデンサークル理論を発見しました。Appleでは商品を説明する時に「WHY」の部分から始め、ブランディングに成功しています。
Appleが重視するのは、商品そのものの説明よりも「なぜ商品を開発・販売するのか」です。Appleの商品が発売のたびにヒットし、ファンに愛される理由は、信念や価値観を繰り返し発信することで共感を生んでいるためです。
2. ゴールデンサークル理論がマーケティングに役立つ理由
ゴールデンサークル理論は、「優れたリーダーが意見をどのように伝え、人を動かしているのか」を理論づけています。マーケティングでもゴールデンサークル理論は応用でき、商品へのファンをつくり、人を購入に向かわせるために役立ちます。
ゴールデンサークル理論がマーケティングに役立つ理由について詳しく解説します。
2-1. 人間の脳の仕組みに合っている
サイモン・シネックは、ゴールデンサークル理論を脳科学と結び付けて説明しています。
シネックは、「感情や本能の領域である大脳辺縁系を刺激すると行動を起こしやすくなる」と主張しています。人間の脳は2つの構造でできており、1つ目が感情や欲求をつかさどる大脳辺縁系、2つ目が冷静に物事を考える大脳新皮質です。
「WHY」の説明は、聞き手の信念に訴えかけるため、大脳辺縁系を刺激する情報です。「HOW」「WHAT」は大脳新皮質の領域で処理する情報であり、感情の部分を刺激しない可能性があります。
まずは「WHY」の説明で感情を刺激し、次に「HOW」「WHAT」で具体的な情報を伝えると、脳全体が意思決定しやすい状態になると言われています。
2-2. イノベーター理論に沿っている
イノベーター理論とは、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャースが提唱した、新しい商品やサービスが市場に普及していく過程を説明した理論です。
イノベーター理論では、新商品が広まる過程を5つの層で説明しています。5層のうち初期の「イノベーター(革新者)」と「アーリーアダプター(初期採用者)」は、新しいものに価値を見出す層です。ロジャースは、「イノベーター」と「アーリーアダプター」の攻略が新商品の普及に影響すると主張しています。
「イノベーター」と「アーリーアダプター」は、他の層と比べて直感を大事にします。ゴールデンサークル理論に基づいた説明は、聞き手の感情や本能に訴えかけるため、「イノベーター」と「アーリーアダプター」の層を動かしやすい方法です。ゴールデンサークル理論はイノベーター理論に沿った手法であり、マーケティングシーンでの効果が期待できます。
3. ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用する方法
ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用するためには、自社の商品・サービスの「WHY」「HOW」「WHAT」の要素をそれぞれ考える作業が必要です。
以下では、ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用する際のポイントを詳しく説明します。
それぞれの段階で重要なポイントを押さえることで、適切なブランディングが行えます。以下では各段階で行うべきことを、ポイントとあわせて紹介します。
3-1. WHY:自社のミッション・ビジョン・バリューの発信
ゴールデンサークル理論の「WHY」にあたる部分が、企業のミッション・ビジョン・バリューです。ミッション・ビジョン・バリューとは、組織の指針や根底となる部分を言語化したもので、代わりに「経営理念」や「企業理念」を置いている企業もあります。
ミッションは「使命」や「目的」を指し、企業が何をやりたいのか示す部分です。ビジョンは「将来像」であり、ミッションを実行した理想の姿を指しています。バリューは「価値基準」と訳され、企業活動の根底にある指針です。
例えば、プレゼンテーションであれば、最初に自社ならではの信念や価値観を話し、商品を生み出すまでのブランドストーリーを発信しましょう。
3-2. HOW:自社の強みや差別化ポイントの明確化
ゴールデンサークル理論の「HOW」にあたる部分が、自社商品・サービス独自の強みです。「HOW」を伝える際は、自社のミッション・ビジョン・バリューを根底に置き、自社の強みや他社と異なる点をアピールします。企業独自の強みが分かりやすく伝われば、理性の部分でも商品を購入するメリットを実感できます。
自社独自の強みを見出すために、「差別化戦略」や「USP」の考え方を役立てましょう。「差別化戦略」は、自社の商品・サービスが他社と比較して価値のあることを、お客さまに認知してもらう手法です。「差別化戦略」は、「市場ニーズの把握」→「競合他者・商品のリサーチ」→「自社の強みの認識」という過程で実践されます。
「差別化戦略」において、自社の強みを洗い出すのに欠かせないのが「USP」の視点です。「USP」は、お客さまに対して、商品・サービスの特徴を生かした独自の価値を提案することを意味します。「USP」をつくると、商品・サービスによって得られる利益がお客さまに分かりやすく伝わります。
「差別化戦略」についての詳しい内容は、以下のリンク先を参照してください。
内部リンク:差別化戦略とは|施策の実践方法や成功事例も解説
3-3. WHAT:提供する商品・サービスの紹介
ゴールデンサークル理論の「WHAT」にあたる部分は、商品・サービスの内容そのものを指します。「WHAT」を説明する際は、商品内容に「WHY」と「HOW」を絡めて発信しましょう。提案する商品によって「WHAT」は異なりますが、根底にある「WHY(自社のミッション・ビジョン・バリュー)」は同じです。
「WHY」を中心に据え、「HOW(どのような強みがあるのか)」「WHAT(具体的な商品・サービス内容)」を説明すると、お客さまの印象に残りやすくなります。
まとめ
ゴールデンサークル理論とは、「WHY(なぜ)」→「HOW(どうやって)」→「WHAT(何が)」の順番で物事を伝えることで、相手から共感を得られるという理論です。お客さまにプレゼンをする場合、説明を「WHY」から始めれば、商品やサービスに込めた信念や意義が伝わりやすく、相手の感情に直接働きかけられます。
ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用するためには、自社の商品やサービスの特徴をそれぞれ「WHY」「HOW」「WHAT」に当てはめるとよいでしょう。