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デザインの魅力を高めるキャッチコピーの秘密
2022年08月06日
普段何気なく目にする、キャッチコピー。
実は、言葉の使い方次第で、ユーザーの好感が大きく変動することをご存知ですか?
『デザイン×言葉』で、商品やサービスの魅力を最大限に高める秘密をご紹介します。
キャッチコピーのはじまり
キャッチコピーは、商品や広告の告知や宣伝に用いられ、インパクトのある言葉でユーザーを惹きつける役割を持っています。
日本では古く江戸時代に、平賀源内が最古のキャッチコピーをつくったと言われています。
現代でも広く知られるキャッチコピー「土用の丑の日」と言えば、夏にうなぎと共に目にした方も多いでしょう。
元々うなぎは寒い季節が旬で、夏には売り上げが落ち込む食材でした。
ある夏、うなぎが売れずに悩んだ鰻屋が、平賀源内に売り方の相談をしたそうです。
源内は、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。
引用元:Wikipedia
その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着した。
目的を定め、それを達成する言葉を選定する
鰻屋の例で言えば、夏の食べ物ではないと思われていた鰻を夏に食べる「動機」をつくることが目的でした。
このように、キャッチコピーを選定する際には、目的を定めることと、それに合わせた言葉選びが重要です。
そして、目的に沿って人の心を動かすことができた瞬間こそ、キャッチコピーが役割を果たしたと言えるでしょう。
言葉のデザインで心を動かす
デザインに意味を持たせる「言葉」
ビジュアルのデザインは、視覚的にユーザーに訴えかける力を持ちます。
色や形は直感的に魅力を伝え、キャッチコピーはそれに意味を持たせたり、興味を惹き、時には説明まで行います。
例えば真っ赤なドリンクの缶のデザインがあったとします。
それが炭酸ジュースなのか、エナジードリンクなのか、トマトジュースなのか、色の情報だけでは分かりません。
しかし、そこにトマトジュースと明記することで、赤色に意味が生まれ、トマトの赤だと認識できます。
鰻屋が品物を変えずに人の心を変えたように、同じデザインでもコピーの違いで感じ方が変化します。
下記のトマトジュースの例では、どのコピーが一番美味しそうに感じますか?
美味しさ重視の方はbを選び、健康志向の方はcを選ぶ方が多いかもしれません。
ユーザーがどんな生活で、どんな心情であるかにより、キャッチコピーの受け取られ方は変化します。
ユーザーのことを理解し、言葉を使い分けることが、言葉で心を動かすポイントです。
ユーザー目線のキャッチコピー
キャッチコピーとユーザーの関係を意識すると、世の中にあるキャッチコピーが、必ずユーザーの目線を意識してつくられていることがわかります。
実際に販売されている商品の例を見てみましょう。
「ENERGY10秒チャージ」inゼリー
出典:MORINAGA inゼリー
短い時間でエネルギー補給が出来ることを端的に伝えたキャッチコピー。食事を摂る時間がなく、一刻も早く栄養素を補給したいユーザーに対して「10秒」という言葉でスピード感を表しています。
「1000曲をポケットに」初代iPodのキャッチコピー
出典:Apple Inc.
競合各社がこぞって○GBなど、データ容量をアピールする中、誰もが理解できる言葉で他社にない大容量と、手軽に持ち運べる魅力を伝えました。 iPodのユーザーは、10代の若者から中高年と幅広く、専門的な言葉よりも分かりやすい言葉が共感を得ました。
魅力あるキャッチコピーをつくる、3つの秘密
良いキャッチコピーを生み出すためには、どのような要素が求められるのでしょうか?
さまざまな「名作キャッチコピー」に共通する、3つの秘密をご紹介します。
①共感:ユーザーの行動や知識、心理状態を想像し、相手に理解される言葉と文字数である
②好感:共感で伝えた情報が、ユーザーにとって利点を感じ、魅力的である
③差別化:共感と好感の内容が、他社にはない独自のものであること
①共感
これには、ユーザーが分かりやすく、魅力を感じる言葉であることが大切です。
例えば、家庭向けのネット回線を売るにあたり、その速さをアピールするとします。
以下の例のどちらが共感を得られそうでしょうか。
A「ベストエフォート方式で、30Mbpsの速度を計測!」
B「動画も音楽もサクサクダウンロード!もう待ち時間はいらない」
この場合、多くの方がBに共感を抱くでしょう。
Aに使われている単語は業界では通用しても、一般の方には耳なじみがないため、強みを伝えることができません。
ユーザーは、通信速度の正確な数値よりも、それが自分の生活にどのように影響するかを知りたいのです。
ユーザーの知識で理解できる言葉か、ユーザーの体験や心情に寄り添えているか、目線を変えて言葉を吟味しましょう。
また、あまりにも文章が長いと途中で読むのをやめてしまいます。伝えたいことを端的にまとめ、文章を適切な長さにすることも忘れずに。
②好感
いくら商品やサービスの魅力を伝えても、それが相手にとって好ましいものでなければ、「ふうん、そうなんだ」で終わってしまいます。
そこから一歩踏み込んで、買いたい・利用したいと思われるには、そのユーザーにとって魅力的に感じることが盛り込まれている必要があります。
これは、販売する市場の影響も受けやすい項目です。
例えば、10代女性が利用するお店で美容液を売るとしたら、どちらのコピーに好感を抱くでしょうか?
A「世界一シワが消える!−5歳美容液」
B「肌トラブルにバイバイしよう!ずっとすべ肌美容液」
答えはBです。
相手が10代女性であると考えると、シワに悩む人はほとんどいません。いくら優れた効果であることが伝わっても、自分にとって好ましいとは思えないはずです。
10代女性の肌悩みは、ニキビや赤み、毛穴汚れなど、肌トラブルに起因するものが上位を占めています。
例え世界で一番の技術や効果を持っていても、相手にとって好ましくなければ購買にはつながらないことが分かりますね。
③差別化
せっかく共感と好感を得られても、他社と同じ魅力を訴えるだけでは、市場の中で埋もれてしまいます。
先ほど例に挙げたネット回線や美容液についても、全く同じ効果の商品が世に出回っていたら、目に留まる可能性はぐんと低くなってしまいます。
例えばネット回線について、すでに他社も同じ速度でサービスを提供してる場合は、料金や手続きの簡単さ、トラブルが起こった時の対応など、別の付加価値が必要になるかもしれません。
ユーザーに「この商品だから、このブランドだから選びたい」と思われるためには、他にはない個性と魅力を見出すことが大切なのです。
差別化のポイントが思い浮かばない場合は、時に商品内容やデザインを見直してみるのも有効かもしれませんね。
まとめ
キャッチコピーについてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
魅力あるキャッチコピーは、商品やデザインと合わせて活用することで効果を発揮します。
単なる言葉選びにならないよう、真摯にユーザーに向き合い、自社の商品やサービスの魅力を最大限に引き出しましょう。
成功のために言葉を活用している事例もご紹介しておりますので、以下よりご覧くださいませ。
岡山本社 デザイナー。 各種デザインからブランディングまで、業界を問わずデザインやディレクションをおこなっている。丁寧で繊細なコピーワークと可愛らしいイラストを得意とし、ブランドのコンセプトづくりから商品のデザインまで幅広く携わる。