自社の理念と価値を魅せる「企業ロゴマーク」のポイント
ブランディング戦略とは?必要な理由と実施するメリット・方法を解説
2023年12月28日
ブランディング戦略は、企業のアイデンティティや価値観を消費者に伝え、消費者の信頼やロイヤリティを築く上で欠かせない要素です。
消費者は信頼するブランドに対して、継続的な関心を持ちやすく、リピート購入をしてくれる傾向にあります。また、ブランディング戦略を通じて築かれた強いブランドイメージは、企業の評価や株価にも良好な影響を与えることが多いです。投資家やステークホルダーからの信頼も増し、長期的なビジネスの成長や安定的な収益をもたらす要因となります。
当記事では、ブランディング戦略の基礎的な内容から、戦略を立てる際のポイントまで詳しく解説します。
1. ブランディング戦略とは?
ブランディング戦略とは、企業や製品、サービスの「ブランド」を形成、維持、拡大するための総合的なアプローチや具体的な計画のことを指します。
「ブランディング」はブランドを形成・強化する一連のプロセスを指し、「ブランディング戦略」はそのプロセスを達成するための具体的な計画や方法を意味します。
1-1. ブランディングとの違い
「ブランディング」とは、企業、製品、またはサービスの独特な特徴や価値を体現し、伝えるための総体的なプロセスや取り組みのことです。例えば、ブランドの視覚的な要素(ロゴや色)、コミュニケーションの方法(広告やPR)、体験(顧客サービスや製品の品質)などが含まれます。
ブランディングはあくまで、ユーザーに対して共通のイメージを持ってもらうための過程であり、戦略ではありません。
一方で、「ブランディング戦略」とは、そのブランディングの取り組みをより具体的かつ戦術的なレベルで計画・実行するためのプラン・方法のことです。ブランディング戦略は、目標市場の特定、競合との差別化、ブランドのメッセージや価値の明確化、ブランドメッセージを最も効果的に伝える手段の選定などが含まれます。
1‐2. マーケティング戦略との違い
「マーケティング戦略」は、製品やサービスを対象とする市場に導入・販売するための具体的なアクションプランのことです。例えば、市場の調査、競合分析、製品のプライシング、販売チャネルの選定、プロモーション活動など、多岐にわたる要素が含まれます。マーケティング戦略の主な目的は、設定された目標(例:売上高、市場占有率など)を達成することです。消費者のニーズや望みに応じて製品やサービスを提供するための戦術的な取り組みを中心としています。
ブランディング戦略は「何であるか」(企業や製品のアイデンティティ)を明確にし、それを強化・伝えるためのものです。一方で、マーケティング戦略は「どのように売るか」(市場での成功を追求するためのアクション)を中心に考えるものです。
ブランディング戦略もマーケティング戦略も相互に作用します。つまり、効果的なブランディングはマーケティング活動の効果を高め、同様に効果的なマーケティングはブランド価値を向上させる可能性があります。
2. ブランディング戦略を行うメリット
競合他社が増えてきていること、消費者の購買力が下がっているといった背景から、大企業だけでなく、中小企業も含めてブランディング戦略が必要となってきています。以下では、ブランディング戦略を立てるメリットについて紹介します。
2-1. 他社との差別化ができる
ブランディング戦略が成功すると、消費者はあるブランドを選ぶ際に、単純に価格や性能だけでなく、ブランドが持つ独自の価値やストーリーに基づいて選択するようになります。例えば、環境に優しい製品を提供するブランドや、社会貢献を強調するブランドなどは、それぞれのブランドイメージや価値に共感する消費者からの支持を集めることが可能です。
結果、同じ市場で競合する他社との差別化を実現し、消費者が多様な選択肢の中から自社の商品やサービスを選ぶ理由を強固にできます。
2‐2. 顧客ロイヤリティを高められる
ブランディングは、単に製品やサービスの特徴を伝えるだけでなく、その背後にある企業の理念や価値観、ストーリーを消費者に伝達する役割があります。ブランディング戦略が成功すれば、消費者はブランドに対して深いつながりや信頼関係を感じるようになるでしょう。
結果的に、消費者が製品やサービスを選ぶ際の判断基準として、品質や価格だけでなく、ブランドとの関係性や信頼性を重要視するようになります。例えば「ちょっと遠いけど、A店の野菜は無農薬のものを扱っているから安心だし、接客も元気ですがすがしいから買いに行こうかな。」「B社の製品は少し高いけど、環境に配慮されているし、使いやすいデザインだからよく買っています。」といった例は、ブランディング戦略が成功して顧客ロイヤリティが高まっている状態と言えるでしょう。
顧客ロイヤリティが高まっていると、新しい製品やサービスが市場に登場した際にも、既に築いている信頼関係があるため、消費者が好意的な姿勢や興味・関心を持ちやすくなります。
2‐3. 利益率を高められる
ブランディング戦略が成功すると、製品やサービスの機能や品質だけでなく、そのブランドが持つ独自のストーリーや価値観、イメージによって消費者から選ばれることが増えます。結果的に、同じカテゴリーのほかの商品やサービスと比較しても、一定の価値を付加して販売することが可能になります。
例えば、高級ブランドの製品は、類似の製品と比較して明らかに高価であることが多いです。しかしそのブランドが持つ価値やイメージ、信頼性などによって、消費者は高い価格でもある程度納得するでしょう。むしろ、消費者は製品自体の価値だけではなく、ブランドの価値に惹かれている部分もあり、購入することによって特別な満足感やステータスを得られたと感じます。
ブランディング戦略を通じて構築されたブランドの価値は、製品やサービスの価格設定の柔軟性を高め、結果として利益率を向上させやすくなります。
2‐4. 知名度が上がる
ブランディングを浸透させるプロセスにおいては、広告や宣伝活動、各種イベント、ソーシャルメディア活用などさまざまな手法が取り入れられます。より多くの人が企業の存在を知り、なおかつブランドに対する共感を得られれば、知名度も徐々に上がっていくでしょう。
知名度が上昇することで、消費者が製品やサービスを購入する際の選択肢に自然と入ってきます。市場での競争力も向上し、ブランドの価値をさらに高めやすくなります。
2‐5. 資金調達が有利になる
ブランディング戦略は企業の外部的な評価や信頼性を向上させる要因となり、資金調達の際にも有利な状況を生みやすくします。
例えば、強固なブランドが築けている企業は、投資家や金融機関からの信頼を獲得しやすくなるでしょう。ほかにも、ブランドの知名度や共感が高まると、クラウドファンディングのような資金調達方法でも、多くの支援者や投資家の関心を引きやすくなります。
パートナーシップや共同事業を結ぶ際にも、ブランディング戦略がしっかりしていれば、自社に対して好意を持たれやすくなるでしょう。
3. ブランディング戦略の方法
ブランディング戦略を立て、実際に施策を打つ際に、具体的にはどのような手順・流れで行えばよいのでしょうか。以下では、6ステップに分けて各手順を分かりやすく紹介します。
3-1. 現状分析を行う
まずは、企業やブランドの現在地を明確にし、今後どのようなブランドを築いていくかについて指針を立てます。
現状分析を行う際には、自社のブランドや製品、サービスの位置づけや市場の認知度、顧客からの現状の評価を理解することが必要です。また、競合他社との比較や、市場内での自社の強み・弱み、外部環境の機会・脅威などを詳細に把握しましょう。
現状分析を行うための主要な分析方法としては、以下の通りです。
SWOT分析
自社の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を明確にし、現状を客観的に捉える手法です。競合分析
市場に存在する競合他社やそのブランドの強み、弱み、ポジショニングを分析します。顧客インタビューやアンケート調査
顧客の声を直接取り入れることで、製品やサービスに対するニーズや期待、満足度などを詳しく知ることができます。市場調査
市場のトレンドやニーズ、今後の市場の動向などを理解するために、専門の調査会社やデータを活用して情報を収集します。
3‐2. ターゲティングを行う
ターゲティングとは、ブランドがメッセージを届けるべき主要な顧客層、つまり「ユーザー」となる消費者や組織を特定し、焦点を絞ってアプローチすることです。ターゲティングを行うことで、ブランディング戦略全体が一貫性を持ち、ブランドのメッセージがより響きやすくなります。
ターゲティングを行う際には、まず自社の製品やサービスがどのようなニーズや問題点を解決するのかを明確にします。その後、自社のブランドや製品の価値を最も感じ取ることができる層を特定します。この際、年齢、性別、趣味、ライフスタイル、職業、地域などのさまざまな要素を考えましょう。
ユーザー層の価値観や消費動機、情報収集の方法などを深く理解することで、ブランドが伝えるべきメッセージやコンテンツ、マーケティングの手法をより効果的に策定できます。
3‐3. 市場でのポジショニングを行う
ポジショニングとは、企業やブランドが市場や消費者の心の中でどのような位置を占めているか、あるいは占めたいかを明確に定義するプロセスを指します。
市場でのポジショニングを行う際、まずは自社の製品やサービスの核となる価値や特徴を深く理解することが必要です。その価値や特徴が解決する顧客のニーズや問題点、競合との相違点などを明確にします。特に相違点や差別化できる点は、ブランドが市場内で独自の位置を築くためにも重要です。
3‐4. ブランドの定義付けをする
ブランドの定義付けを行う際、ブランドパートナーが自社ブランドに対して求めている価値を明確にすることが大切です。ブランドパートナーとは、消費者や顧客だけでなく、ステークホルダーや従業員、パートナーシップを結ぶ企業など、ブランドに関わるすべての関係者を指します。
ブランドパートナーが、ブランドに求めているものは何か(例:機能的な価値なのか、感情的な価値なのか、それとも社会的な価値なのか…)を理解することで、ブランドがどのような価値提供を目指すべきかが見えてくるでしょう。
その後は、ブランドのコンセプトを言語化しましょう。ブランドが持つ独自の価値やビジョン、ミッション、ストーリーやメッセージを一貫して伝えるためにも重要です。マーケティングや広告活動、商品開発、コミュニケーション戦略など、ブランドのすべての活動における指針となり、一貫したブランド体験を提供するための基盤となります。
3‐5. ブランドイメージを固める
定義したブランドコンセプトを具現化し、視覚的かつ感情的な要素を通じて消費者やブランドパートナーに伝える仕組みを構築します。
このステップでは、ブランドロゴやシンボルの開発も行います。ロゴやシンボルは、ブランドのアイデンティティを視覚的に表現する中心的な要素です。デザインはブランドの哲学や価値を反映するように設計しましょう。
3‐6. ブランドの訴求方法を決める
これまでのステップでブランドの基本的なアイデンティティやイメージ、価値を定義しました。それをどのようにユーザーとなる顧客や市場に伝え、共感を得るかという点で、ブランドの訴求方法を決めることが不可欠となります。
ブランドの訴求方法を決定する際には、まずブランドが伝えたいメッセージや価値、ユーザーとなる顧客の特性やニーズ、消費動向を確認しましょう。それを基に、最も効果的なコミュニケーション手段やチャンネルを選択します。例えば、若い世代をユーザーにする場合、SNSや動画コンテンツなどデジタルメディアを中心にした訴求方法が効果的であることが考えられます。
訴求方法を選ぶ際には、ブランドの持続的な成長を目指し、短期的な売上向上だけでなく、長期的なブランド価値の向上を意識することが必要です。定期的なフィードバックの収集やマーケットの動向を把握し、訴求方法を柔軟に調整しましょう。
4. ブランディング戦略の効果計測はどのように行う?
ブランディング戦略において施策を打った場合、その効果測定も行うことが大切です。ブランディング戦略の効果は定性的になりやすい部分もあるので、しっかりとKPIを定めて、定量的に測定する部分も設けるようにしましょう。
以下では、具体的にどのように効果測定を行えばいいかについて解説します。
4-1. 認知度を測る新規接触率
新規接触率は、ある期間内にブランドや製品に初めて接触した人々の割合を示す指標です。新規接触率(%)は、【新規のユニークユーザー数 ÷ 全体のユニークユーザー数】で計算できます。
新規接触率を確認することで、ブランディング戦略やキャンペーンの影響を数値として理解することが可能です。また、新たな顧客層や市場へのアプローチがどれほど成功しているかを評価できます。例えばテレビCMやデジタル広告キャンペーンを実施した後、新規接触率が上昇していれば、それらの広告が新しいユーザー層に届いていると判断できるでしょう。
新規接触率を測定するためには、アンケート調査や各種ツールを活用して、特定の期間内にブランドや製品に初めて触れたかどうかを調査することが一般的です。また、デジタル広告の場合は、広告プラットフォームの分析ツールを利用して具体的な接触数や新規ユーザーの増加を確認できます。
4‐2. 紹介したくなるサービスかを測るNPS
NPS(Net Promoter Score)は、顧客のロイヤリティを数値化したもので、顧客があるブランドやサービスを他人に推薦する確率を示す指標です。具体的には、顧客に「このブランドやサービスを、友人や家族に推薦する可能性はどれくらいですか?」という質問をし、0から10までのスケールで回答してもらいます。
この回答に基づいて、顧客を3つのカテゴリーに分けます。
プロモーター/推奨者(9-10点をつけた人々)
ブランドやサービスに非常に満足しており、他人に積極的に推薦すると考えられる人パッシブ/中立者(7-8点をつけた人々)
ブランドやサービスには満足しているが、積極的に推薦するかどうかは不明確な人ディトラクター/批判者(0-6点をつけた人々)
ブランドやサービスに不満を持っており、他人に推薦することは考えにくい人
NPSの計算方法は、プロモーターの割合からディトラクターの割合を引くことで得られます。その結果、-100から100までのスコアが得られます。
4‐3. 購買したくなるサービスかを測るDWB
DWB(Definitely Would Buy)は、ブランディング戦略やマーケティングの成果を評価する際の重要な指標の1つです。消費者が特定の商品やサービスを「確実に購入する意向がある」と感じているかを数値化する方法です。
DWBは、特に新製品の発売前やマーケティングキャンペーンの前段階での調査に使用されることが多い傾向です。消費者に対して「あなたはこの商品やサービスを確実に購入しますか?」といった質問を行います。その回答の割合を測定し、製品の市場での受容度や、ブランディング戦略が効果的であるかどうかの初期指標として活用します。
まとめ
ブランディング戦略は、企業や製品の独自性と価値を明確に伝え、消費者の心に訴えかけるための手法です。強固なブランディングを築くことで、他社との明確な差別化、顧客ロイヤリティの獲得、利益率の向上、知名度の向上などのメリットを得られるでしょう。
ブランディング戦略を実践するためには、まずは現状の分析から始めます。その後、ユーザーの特定、市場でのポジショニングの検討、ブランドの核となる価値の定義・固定化、適切な訴求方法の選択、というプロセスで行うことが一般的です。