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和食をおいしく味わい絆を育む

熊倉 功夫 isao kumakura

日本文化史・茶道史を専門とする歴史学者、文学博士。
2010年から静岡文化芸術大学学長に就任。
日本人の伝統的な食文化である和食のユネスコ無形文化遺産登録を目指す際、検討会会長を務める。和食の危機的状況を改善し、和食文化を次世代につなぐために、和食文化の保護・継承国民会議「和食会議」の会長をはじめ多方面で活躍している。

和食文化の保護・継承 国民会議「和食会議」

「和食」文化の保護・継承 国民会議(略称:「和食会議」)は、「和食;日本人の伝統的な食文化」のユネスコ無形文化遺産登録申請を契機に、日本食文化を次世代へ継承するため、その価値を国民全体で共有する「和食」文化の保護・継承プロジェクト(Washoku JAPAN)を展開しています。
和食文化の保護・継承 国民会議「和食会議」 ホームページ

 「日本の家庭料理としての食卓に並ぶ「和食」こそ、世界に誇る日本文化。しかし家族そろって食卓を囲む機会が少なくなりました」。日本文化史に精通する歴史学者でもあり、文学博士でもある熊倉さんは語る。
 
 日本では和食の危機が懸念され、政府はついにユネスコ無形文化遺産に申請、登録された。一方、海外では和食の価値が認められ多くの日本料理店が存在する。
 
 新しいものを取り入れ豊かになった日本人が、近すぎて見えなくなってしまった「和食」の良さや価値。それを、あらためて知ることで考える。

今、和食が危機に瀕している

2013年12月、日本料理が世界無形文化遺産に登録され大きな話題となりましたが和食を登録申請しようと思われた動機を聞かせていただけますか?

一番の目的は最近の日本人にみられる和食離れを食い止めるためです。近年は海外において和食ブームが続いていますが、日本では家庭の食卓から和食は消えつつあります。このままだと滅びるかも知れない。

私たちはその状況を危惧し、国全体で和食の大切さに気づくきっかけになればと思い、世界無形文化遺産に登録申請をしました。

世界無形文化遺産は、すぐれた建物や遺跡、自然環境など の有形のものを対象とする世界遺産とは異なり、世界各地の歴史や風習に根づいた伝統文化を保護する条約です。だからこそ意味がありました。申請の提案名称を、日本人が家庭で食べている「和食」にしたのも、日本人全体で和食の危機を回避する必要があったからです。

日本人の食文化を伝えるのは難しいと思うのですが、
ユネスコの委員会に和食の魅力をどのようにお伝えになったのですか?

いろいろ知恵を絞ってまとめた結論を踏まえて、和食の「豊かさ」と「心」についてアピールすることにしました。的確に伝えるために、和食を文化や環境など多面的に捉え、大きく分けて4つの柱を立てることにしたのです。
1つ目は和食が自然を尊重する食文化であるということ。日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材があることを伝えたいと思いました。2つ目は健康的な食生活について。ご飯とおかず、汁を基本とする一汁三菜の食事は動物性油脂が少なく、栄養バランスも理想的なことを挙げました。3つ目は、季節を料理で楽しむところですね。旬の食材を生かしながら、その時々で調理方法を変えて味わうのは日本ならではの風習だからです。また味わいの基本味がうま味です。4つ目として、正月のおせち料理など社会的な慣習に食文化が深く関わっていることを伝えました。 

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